WILDのお話。

ゆっくり少しずつ書いていたら、もう1ヶ月以上前のことになってしまいましたが、裕翔くんの初主演舞台『WILD』の大阪公演を観劇しました。あまりに凄くて、初めての経験で、この気持ちは文字に残しておきたいなと思ったので備忘録として書き残しておきます。

 

私の自担、中島裕翔くんが、「挑戦してみたい仕事は?」という質問に対して「舞台」と答えているのを、雑誌か何かで初めて目にした時から、裕翔くんの舞台は見に行きたい、絶対見に行くと決めていた。決めていたといっても、勿論、行きたいという気持ちがあれば誰でも行けるなんていう簡単なものではないから、当選メールが来た時には泣くほど喜んだ。しかも届いたチケットには、3列という文字。インターネットで劇場の座席表を調べ、これって前から3列目って事ではないか、と思いつつも半ば信じられず、当日、実際に前から3列目の席に座って初めてとんでもない席が当たったと思った。

ストレートプレイと呼ばれる舞台を観劇するのは初めてだった。歌なしダンスなし、休憩なしの100分間ずっとお芝居を見るのは初めてだった。感想を簡潔に言えば、私は演劇というものに魅せられた。衝撃、というと陳腐で大げさに聞こえるが、でも本当に胸にズドンと衝撃を受けた。

普段からドラマや映画を見るのは好きだが、それはスクリーンの中の世界だ。ドラマなんて特に、見ている時は集中していてもCMになればスマホを触って自分の世界に戻るし、母に呼ばれて返事をしてふとテレビの画面から目を離せば、周りに広がっているのは日常だ。でも、あの日、あの時間、私の目の前に広がっていたのは現実だった。そして私もその現実の中にいた。頭の中では「これはお芝居だ」とわかっているのに、いつの間にか目の前の出来事は今リアルタイムで進んでいるんじゃないかという錯覚に陥る。裕翔くん含め3人の役者の声、手や足の動き、息遣い。3列目という幸運な席のおかげで、全て「生」だった。

開演時間に会場が暗くなり、舞台が明転したとき、あまりの近さに息をのんだ。体感距離でしかないが、おそらく10メートルもなかった。裕翔くんが、私の大好きな人が目の前にいる。そう思って初めのうちはずっと見ていたけれど、いつの間にか私が見ていたのは中島裕翔ではなく、アンドリューだった。動きや表情や言葉の間の取り方は、完全に外国人のそれだった。

裕翔くんの演技を大好きだとずっと思っていたけれど、こんなに心の底からすごいと思ったことはないかもしれない。正直言って、芝居経験ゼロの素人の私には、演技の上手下手の詳しいところはわからないので偉そうなことは言えない。

でも、これだけは自分の目で見て、聞いて感じた。

裕翔くんは主役なのに主役に見せない演技が本当に上手だ。

今回の舞台の主役はアンドリューで、100分間ずっと、本当に一度も捌けることなく舞台上にいる。でも、テンポよく進んで行く会話劇の主導権を握っているのは、彼のもとにやってくる女や男。役者さんや裕翔くんも自ら語っている、いわゆる受けの芝居とはこういうことか、と思った。裕翔くんはそれが抜群に上手かった。アイドルのオーラが完璧に消える。アイドルファンとしては、いつものキラキラはどこへ行ったんだ?と戸惑ってしまう程に、舞台上での裕翔くんは主役ではなくて、普通のどこにでもいそうな人だった。いや、普通の人と書くと少し語弊があって、自然と裕翔くんに目が惹かれる場面は多々あったから、やっぱりそういう天性のものは持っているのだと思うけれど。

自分でも気づかないうちに、かなり舞台の世界にのめり込んでいたようで、カーテンコールでキラキラ笑顔の裕翔くんがタッタッと軽い足取りで小走りに出てきた時、まるで魔法を解かれたかのようにふっと我に返った。カーテンコールで2回ほど出てきたけれど、その時は完全にアイドルの裕翔くんだった。スタンディングオベーションで精一杯手を叩きながら、スポットライトに照らされてたくさんの拍手に包まれて清々しい笑みを浮かべている裕翔くんを見ていたら、こんなにすごい人のファンでいられて幸せだと思えて、心の底から誇らしくて、涙が伝って落ちた。かと思えば、ギャップというアイドルの武器をもっている。本当にずるい。最後なんて、いいとものタモリさんのモノマネをして、会場の拍手をチャッチャチャチャ、と綺麗にまとめると、まるでいたずらが上手くいった子供みたいに嬉しそうに笑って去っていった。ああ、またこうやって彼の魅力の沼に引き込まれていくのだと思うと、悔しいくらいに、大好きだという気持ちと尊敬と誇らしさで胸がいっぱいになった。

多分、この経験はずっと忘れないだろうし忘れたくないと思っている。自分が異世界にいるようなあの不思議な感覚や、スポットライトの煌めきの中にいた裕翔くんの姿、劇中の登場人物と同じように動揺したりホッとしたり恐ろしいと思った感情、全て胸の中の宝箱の中にずっと大切にしまっておきたい。人生で初めて見た生の演劇が、裕翔くんのWILDで本当に良かった。

胸を張って言える。中島裕翔くんは、最高の役者さんで、最高のアイドルだ。

ずっと舞台の上で輝き続けてください。